春の北海道で、イボタガを撮影した時の話。

桜が咲き始めるのは、北海道では5月。

市街地でみられる桜はソメイヨシノが多いが、森で見られるのはヤマザクラ。

エゾヤマザクラは、

花と一緒に葉が展開する。

 イボタガの写真でフォトコンの入賞を頂いた時に撮ったコメント動画はこちら。

正直桜単体にイボタガはほとんどとまらない。

だけど街灯の下に桜があれば、きっと留まってくれるだろうと、待ち続けたのがよかった。

エゾヤマザクラとイボタガ 撮影:高橋レオ

寒くてぼーっとしていたら、気づくと頭上に、大きな蛾が飛んでいた。

春のガの中でもイボタガは一際大きく、飛んでくる姿も大変よく目立つ。

その個体は、そのまま街灯にぶつかって、僕の目の前の地面に落ちた後、

また飛んだ。そして今度は桜の枝に、引っ掛かるように止まったのである。

イボタガが特に美しいと思う点は模様にある。

この模様は、まるで誰かが絵に描いたような線を描いている。

僕はこのデザイン性、法則や意図のようなものを感じるのが、不思議でたまらないのだ。

自然の美しさは、時に、神様によって作られたのだとしか思えないことがある。

僕は科学を学んでいるから、神様を信じたりはしないが、

無闇に進化論ばかりを信じているわけでもない。

(それは、僕がただロマン派、ロマン主義だからだ。)

アイヌの人々の考えた信仰や、自然の概念はとても美しいものだと思っているし、

結局彼らを尊び、彼らから学ぶ事以外に、僕たちが生きていく術はないのかもしれない。

僕ら人間が人間として一生を過ごす時間というものは、とても短い。

僕らは時間がない。イボタガは、もっと早い時の流れの中を進んでいる。

そんな一瞬の中で、

今、僕とイボタガは、

同じ空間にいる…

その出会い自体が、尊い事だと思うのだ。

「目の前が美しすぎる。」

そうつぶやきながら、

彼が再び闇に向かって飛んで行くまで、

沢山撮影させてもらった。

翅を小刻みに震わせた後、飛び上がった銀色の眼。

力強い羽ばたきで、桜の枝は揺れた。

僕は、彼らがいつまでも、

彼ららしくいられることを、願い続けている。

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