こんにちは。
写真家の高橋レオです。
今回は僕の海外取材の中でも一番心震えた「ケツァール」という鳥に出会った時の話。
コスタリカの森は本当に多様性豊かで、どことなく日本に似ている。
それは日本と同じように、標高の高い山々が転々と並んでいるからかもしれない。
ケツァールの住む場所は、熱帯雨林のど真ん中というよりは、少し標高高めの「雲霧林」と呼ばれる地帯。
夜は気温は一桁になったりもする。霧のよくかかる苔の生えた森という点だけ聞くと、他のジャングルと同じじゃないかと思うかもしれないが、低地の熱帯雨林は霧がかかるより先に雨が降ってしまうので、実際は結構視界は良好なのである。雲霧林の場合は霧というよりは、常に雲の中にいるような気候。
僕は事前に『水曜どうでしょう』を見ていたので、ここまできたら大泉洋さん一行がみたケツァールを実物で見たいと思っていた。大泉先生のペンタックスの大砲のようなカメラで、フィルムを巻いて生き物を撮っていたあの地に、僕が同じく足を踏み入れただけでも、感慨深い。
しかし現れるのは、このような小さな小鳥ばかり。
クビワアメリカムシクイは、日本に生息するようなムシクイとは似ても似つかない顔立ちをしている。初めて聞いた時、これがムシクイ?と思ったけれど、実際に日本のムシクイとは、分類的には離れているらしい。
それなりに珍しい生き物だというのに、こんなかわいい小鳥を前にしても、
ケツァールの住む森にいると、
彼らがいつ現れてもおかしくないという緊張感で、他の生き物に全く集中できなかった。
大型動物に出会うようなことはないにせよ、
地面には危険な蛇が落ち葉に擬態してじっとしているし、
雨が降ってなくても湿度120%の空気で、カメラがおかしくなってしまう。
大事な時にレンズが曇っていた、なんてことをこの遠征中に何度も経験したから、
それだけは気をつけなくてはならない。
そんなことを考えていると、ガイドのお兄さんはズンズン坂を登っていく。
ジメジメした川沿いから、少しずつ乾燥した裸地が見えてくる。
ガイドの人の話によれば、ケツァールという鳥は、森の奥深いところよりも農地と森の境界のようなところを好むらしい。開発が進んだ土地にはいないんだろうけど、下手に鬱蒼とした場所よりも里山のような場所に生き物が割と多いことは、どの世界でも共通なのかもしれない。
お兄さんは上の方を指さした。
そこには…
想像よりもずっと大きい!
それが飾り羽や尾羽の長さのせいなのか、どうなのかはわからなかったが、
あまりの驚きに瞳孔が開いて、
実際よりも大きく見えてしまったのかもしれない。
『Quetzal』という文字の由来は、
アステカのナワトル語の由来で、「大きく輝いた尾羽」という意味があるらしい。
なるほどなあ。
こうしてみると、一つの景色の中にもたくさんの緑があることがわかる。
こんなに綺麗なら、グアテマラの国旗に書かれてしまうのも納得。
ちなみにグアテマラでは、通貨の単位もケツァールと呼ぶらしい。
1ケツァール…10ケツァール…100ケツァール…
どんだけケツァールが好きなのか。
2019年は、ざっくりロケハンで終わってしまったケツァールの撮影。
中南米の旅が終わり、
こうして時間が経った今も、思い出すのはケツァールのあの長い尾羽。
次はもう少し深く追ってみたい。
彼らの生態をしっかりと観察し、彼らが身近に住んでいることを肌で感じたい。
そう思わせてくれる素敵な出会いだった。
使用機材
水曜どうでしょうで使っていたカメラは「大砲」と呼ばれていたけど、
放送から20年でここまでカメラがコンパクトになるなんて誰が想像しただろうか。
改めて、オリンパスって偉大。
ケツァールに出会えたのですね。撮影できたのですね。おめでとうございました。
緑と赤の組み合わせが上品に見えるから不思議ですす。丸いボタンのような目、長く長く垂れる尾羽。憧れの鳥の筆頭です。
綺麗で可愛い写真をありがとうございました。
グァテマラの通貨の単位がケツァールとは知りませんでした。それほどに愛され大事にされている鳥なのですね。
グァテマラは、鳥も両生類も、そして昆虫も、それはそれは魅力満載。もうちょっと近くていきやすかったらどんなにかいいでしょう。