狩人の眼

カニクイザルたちの甲高い鳴き声。

彼らの敵意は、森を横切る黒い影、

マレーウオミミズクに向けられていた。

一瞬の出来事だった。

薄暗くなり始めた木々の隙間から

何かがぬっと出てきたと思えば、

猿たちは散り散りになってその真ん中に二つ、

黄色い眼だけが目立つように並んでいたのだ。

マレーウオミミズク(Ketupa ketupu) ボルネオ島にて
マレーウオミミズク(Ketupa ketupu) ボルネオ島にて

その一連の出来事に先頭のガイド、

ファイジャンのカヌーを漕ぐ手つきも変わった。

真っ直ぐフクロウだけを見つめると

彼はちいさな声で、

「子供を襲ったんだろう」と言った。

エンジンを止める頃には

一連の流れも嘘のように静まり、

掻き分けるオールの水の音が目立つくらいだ。

フクロウは背中を向け、その模様はまるで森に化けているように見える。

フクロウは、ただ立ち尽くすだけだった。

それでもなお、遠くに見える猿たちの視線は、

冷たいものだった。

そしてカニクイザルの姿が見えなくなる頃

フクロウは僕たちから視線を外した。

並んでいた二つの眼が見えなくなったことによって、

フクロウは完全に森と同化した。

僕たちのおかげで、

狩りに失敗したとでも思っているのかもしれない。

じき夜になる。

あたりは、どんどん暗くなっていく。

今から、森のロッジに帰るまでに、

どれだけの生き物を見ることができるんだろう?

上空を飛ぶシロハラウミワシ(Haliaeetus leucogaster)
上空を飛ぶシロハラウミワシ(Haliaeetus leucogaster)

船を漕ぐと、

木々のてっぺんからシロハラウミワシが飛び出し、

遠くへ飛んでいくのが見えた。

再び鳴るカヌーのエンジン音とともに、

僕の心も高まった。

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