当時僕は、ボルネオ島に滞在していた。
OM-D E-M1 + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
ボルネオ島は、東南アジアの中でも最大級の島で、マレーシア、インドネシア、ブルネイの3か国から構成されている。僕は大学の実習として、熱帯雨林を体感するため、ボルネオ島の野生動物を観察するために訪れたのだった。
早朝の村を散歩するのは、とても気分がいい。
囀る鳥の鳴き声や、鶏の声も、日本とは当然違う。
毎日暑い日差しだったが、毎夜に涼しくなるため、
ボルネオの朝は意外にも気温はそこまでではなかったのを覚えている。
村人たちの挨拶を返しながら、庭先に溢れる生き物たちにも同じように目を配ると、
太陽の照りつける中、ふと後ろから僕を追い越すように現れた蝶がいた。
ひらひら、それでいて、神出鬼没。
不意に現れたその蝶は、
僕の手があと少し届かないという距離間で、花の蜜を吸い始めた。
トリバネアゲハだ。
地元の住民から「Bird-wing butterfly」
と呼ばれていた、
それはそれは印象的な蝶であった。
(広義ではトリバネアゲハは、アカエリトリバネアゲハ属、トリバネアゲハ属、キシタアゲハ属の三属を”トリバネアゲハ”と呼ぶのが一般的である。)
その蝶は撮影している間
全く僕を気にするそぶりを見せない。
じっと同じ花で、
ホバリングをしながら花の蜜を吸っている。
細やかな黄金の色彩が、望遠レンズで撮影していた僕の目にはっきりと飛び込んできた。
その蝶の大きさは、他のチョウの比ではない。
ビビッドな黄色の翅のせいなのか、太陽のせいなのか、僕の目はやられてしまった。
力強いはばたきとしなやかな翅の動きが、
より一層、美しさを引き立てている。
ゆらゆらと力が伝わっていく、しなやかな翅の動きに
僕は見惚れながら、首が痛くなるほど見上げていた。
(SDカードの中身は、あっという間にキシタアゲハ一色となってしまい、ニヤニヤしながら足早に大学の友達が居るところへ向かった。)
人生初のトリバネアゲハを見た瞬間は、僕が改めて蝶の美しさに感動した瞬間でもあったかもしれない。
僕の眼にはキシタアゲハの残像が、
しばらく消えなかった。
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