下北の森で

僕は去年、野生動物とは何かを広く学びたいという思いから、

「下北半島カモシカ調査グループ」の入門講座に参加し、その後冬の調査にも携わった。

カモシカは鬱蒼とした森よりも、拓けた下草の多い場所に現れる事が多いと聞く。食べ物が多いのは適度に陽の光が入る二次林なのだ。近年日本では、人口減少に、林業衰退に伴って森林が管理不足に陥っている。

僕がいた数日間で垣間見た数々のトラックや砂防ダムは、東北の森には似つかわしくなく、歩いた豊かな尾根や稜線から流れる人工的な川には、生気も感じない。

人も居ないのであれば、いくら川が氾濫しようが私たちには関係ないだろうに。

ニホンカモシカはサルやシカと比べれば人との軋轢こそ少ないものの、

人が森に関わらなくなった事による森林の悪化は、ニホンカモシカに少なからず影響を与えているようだ。

生き物も結局は、地球全体の物質の一部にすぎない。スムーズな物質の循環に必要なのが生物多様性の概念であり、偏りが大きくなり始めているのは私たち人類が今までに犯した横暴の数々によってだ。

調査を含め生き物に携わっていると必ず言われるのが「その行いに意味はあるのか?」という疑問だ。さも全てを知っているかのような、どちらの立場にも立つ事のない言葉だ。

外来種にだって命がある。完全駆除なんてできっこないと、いのちの平等を訴える者。

その研究がなんの役に立つのか?という軽率な質問から、私たち庶民が何をしたって、世の中の仕組みは変わらないだろうという諦めなど…

では、夢ばかり見ていれば良いのだろうか?見たいものにだけ目を向けていれば良いのだろうか?

地球史でみても人間の環境破壊は類を見ない影響力があるのだから、

外来種問題において人間に罪があるという事を自覚しているのなら、今直ぐにしなければならないのはピンチを訴えている在来種を守り環境を保全していく事である。

その為に行われるのが「生態学を盛り込んだ最適な駆除アプローチ」であったり、動物福祉を取り入れた、「最も動物に優しい殺なせ方」だったり。

結果がはっきりしなければお金を出す事は出来ないから、その為に研究は必要不可欠であるし、研究をするのは大きな研究機関だけではない。一見なんの役にも立たない(様に見える)基礎研究も、数年後に応用研究に発展させる大きな力になる。

その論文を書き上げたのは研究を始めたばかりの一学生であることもあるのだ。

この現実を見る作業を知らず、何もせずに諦観してしまうのはとても勿体無い事だ。

地球をジェンガに例えてみよう。

ある種が絶滅、あるいは地域絶滅したとしても、上澄みには新しい基礎が少しづつ構築されて行く。でも全体量には限りがあるから、下で抜かれた分しか上に置くことはできない。

一度抜いてしまったら、また同じ場所に戻すのにも根気がいるだろう。

絶滅したニホンオオカミを復活させようとしたって、代わりにハイイロオオカミを導入しようとしたって、今の森と昔の森は全く違う。どうなるかはわからない。

倫理的に言えば、絶滅した生き物をもう一度蘇らせるいうのも、虫が良すぎる。それはジェンガで言えば、一度完全に抜いたものを、元の場所に戻すようなものだ。

イエローストン国立公園の生態系が、オオカミ導入によって改善に向かった話も、森林バランスが崩壊した森を”悪い状態”と呼ぶならば、人の手で”都合の良い”生態系を作っただけに過ぎない。色違いのジェンガが上手くハマってくれた。勿論私たちにとっては、生態系のバランスは保たれていた方がありがたいのだが。

ポテトチップスに使われている植物油脂が、熱帯雨林を切り開いて植えられたパーム畑によって作られていても、僕たちは食べることをやめたりしないだろう。

未来を断定する事は、賢明な研究者ならまずしないから、「生物多様性は絶対正しい」とは言わない。でもそれは理論が間違っているからではなく、人間の手でどこまで管理できるのか、人の手に管理されることを地球は望んでいるのか、といった哲学的な要素も孕んでいる。

結局のところ、私たちが未だに崩れゆくバランスを止める事ができないのは、私たちが動物だからという事にすぎない。

全ての管理をAIに任せるようになって、気づいた頃には、人間はいなくなっているか、今と同じように、悪い事は何も見えないふりをしながら、生活を続けるだろう。

地球が回ることに意味もなければ、宇宙が出来た経緯もわからない。いつか隕石が落ちて氷河期が来るのと、いずれゆっくりと訪れる太陽の消失…

どちらも未来永劫人類が生きていられる見込みはない。どちらも同じと言われてしまえばそうかもしれない。

そう考えると生物多様性も人間のエゴかもしれないが、人類の存続のために、今出来る事は今の状態を保つ事であって、既に入れてしまった外来種や、起こしてしまった自然破壊に対して開き直る事ではないだろう。

みんなが平和を望むのは、平和な世の中を作りたいからではなく、平和な世界しか見たくないからだ。

ニホンウナギが絶滅危惧種である事も、知っているのは日本人の半数以下。

シロクマやパンダが保護される傍で、名もない生き物が今日もどこかで絶滅している。

醜いものは見たくない。悪夢を見たら「良い事が起こる前兆」だとポジティブに捉えるのが人間だ。

それはまるで、市街地で餌をもらいながら、糞便汚く、生態系を壊し、悪さをする野良猫をかばい、必死に可愛がるような。

たまには目を背けたくなる現実もあるかもしれない。

でも一歩立ち止まって考えてみてほしい。

自分の心に嘘をつきたくないのであれば、自分が傷ついてでも、犠牲にしてでも、何かを動かす勇気が必要な時もある。

世界はそれを、愛とも呼ぶんだぜ。

ウナギって美味しいよね

ウナギって美味しいよね。

美味しいから、

これからもずっと日本の文化として残っていてほしいと思う。

僕は食べることが好きなので、旅先では食事に結構お金をかける。

石垣島の最後のディナーはワインとステーキで済ませたし、実際そんな悠々とした旅をするのが好き。

無類のスープカレー好きでもある。

一応学生の分際ではあるけど、旅行をした時にその地にお金を落としていくことは大切なことだと思っている。

しかし残念ながら、これから話すのは単なる美食話などではなく、「土用のウナギ」ともいわれ日本人に慕われるウナギ達の、悲しい話。

生き物好きであり、食べ物好きである僕の、束の間の戯言である。

ニホンウナギは、

絶滅危惧種に指定された。

2017年現在レッドリストには「絶滅危惧IA類」と記載されており、クロマグロも今その位置にある。

他に同じ絶滅危惧IA類として有名なのは、皆さん大好きな、ホッキョクグマだろう。

最近上野動物園で赤ちゃんが生まれた事で人気沸騰中のパンダも、最近まで絶滅危惧IA類に分類されていた。

そう、皆さんがお寿司で注文するウナギ、コンビニやスーパーで売られているウナギは、”パンダより絶滅が危惧されている動物”なのだ。

蒲焼き、お寿司…甘いタレがかかったホクホクの白身。

あぁ、よだれが垂れそう。

そんなウナギ、夏になるとどうしても売り上げが下がるのが江戸時代の悩みだったらしい。

そんな時代に平賀源内が、夏に売れなくなるウナギを売り込む為「土用の丑の日はウナギ」という文化を浸透させた。

この頃はウナギは沢山いたのだから平賀源内に罪はないが、問題はこの伝統を絶滅に追い込まれてまで続けるのか?というところだ。

日本ウナギの生態は特殊なものとして知られ、近年まで繁殖場所も明らかにされていなかった。グアム島沖で繁殖が確認されたのも、完全養殖技術が確立されたのも本当にごく最近の話。

養殖と呼ばれるウナギは、採集されたシラスウナギ(稚魚)を大きくしたもので、卵から孵化させたものではない!

近頃日本に輸入されるシラスウナギは主に韓国から来るものだが、そもそも韓国でウナギは獲れない。

元々日本への輸入は台湾が主流だった。しかし2007年にニホンウナギの輸出が台湾で禁止されてから、何故か韓国でニホンウナギが出回り始めた。

これは、台湾から韓国へウナギの密輸が行われていることを示唆している。

白いダイヤ、ニホンウナギの実態【クローズアップ現代】

「日本人がウナギを求めるから、売っているだけだ」と密輸業者は言う。

現在知られているのは、台湾→金門島→韓国というルート。他にも、いくつかのシラスウナギ密輸ルートが存在する。

私達の口に運ばれているウナギは殆どが密輸ウナギと言うことになる。

漁業において大事なことは、持続的に利用することである。農業とは違い資源は無限に作り出すことはできない。

言っちゃあ悪いが、日本は遠洋漁業で諸外国の海まで底なしに乱獲することで漁業を発展させた。

経済水域が定められてからというものの、他の国が科学的に漁獲制限を行っているのに対して昔の感覚を捨てきれない日本の漁業者も多い。

クロマグロやニホンウナギの他にもニシンやホッケといった魚はその被害を大々的に受けた代表例と言える。

日本の体制はノルウェーなどの正確なTAC制度と比べても未熟な面も多く、最近になってやっとクロマグロの資源管理に力を入れ始めた程度。

台湾は2017年7月にニホンウナギを「最も絶滅の危険が高い種」に指定した。密輸の取り締まりも強化されるだろうが、日本はどうだろうか。

世界は事態を重く見て、ニホンウナギをワシントン条約に指定することも視野に入れている。そうなった場合、近い将来ほぼ、ニホンウナギは食べられなくなるだろう。

日本の行いが今、世界に注目されているのはいうまでもない。

*色々かいつまんでわかりやすく説明したので、詳しいことはネットサーフィンとか文献を読んで下さい。