熱帯の森で妥協しなければならないアイツ

熱帯へ行くにあたって、気をつけなければならないものとは。

ハチ?アリ?クモ?サソリ? それともクロコダイルか? 危険な毒ヘビか?

いやいやとんでもない、どれも人間が直接危害を加えない限り、滅多に襲ってはこない。

問題なのは、黙っていても僕らに寄ってくる生き物。

僕がマレーシアで嫌と言うほど付きまとわれたのは…(回想)

毎日のように降り出す雨のお陰で、ボルネオの森は常に潤っており、あちこちでヤスデを散見できた。

ネッタイタマヤスデの一種。

こんな風に丸くなる事ができる。ダンゴムシみたいで可愛い。

ボルネオのヤスデはサイズが大きい。

赤いヤスデの模様が、サンヨウベニボタルに似ている気がするのは僕だけだろうか。

落ち葉の層は薄いが、雨が降っても水は直ぐに大きな川へ流れてしまうのが熱帯雨林だ。

ある日の正午。

長靴をしばらく脱がなかったのが悪いのだが…何か左足に違和感を感じ脱いで見ると、

靴下とズボンの間の隙間にうごめく、カラフルなゴム状の物体。

ヒルが

ダンシングしていた。

慌てて長靴をめくりあげ、なんと3匹のタイガーリーチ(英名)を左の長靴から追い出した。

さらに右足を確認すると、靴下が血まみれ。どうやら右足のヒルは既にひとしきり吸い終わって、本体は何処かへ行ったようだ。

(冷静に対処できるはずもなく、写真が無い。笑)

長靴の中に入り込むヒル。

奴らの食い意地には、恐れ入ります…

夜の両生類調査を前に、貧血なのかなんなのか、気分を悪くしたげんごろうであった。この物語は後に語り継がれることになる。

毎回、1、2匹ヒルをくっつけて返ってくるガイドさん二人。(基本半袖短パン)

”カには毎日刺されているから、耐性がついて殆ど腫れる事はない”と彼らは言う。

腫れない、痒くならないって、どういう原理なんだろう。

今回、虫刺されに慣れていない北日本人を3人病院送りにしたカの力がウソのように、彼ら二人の体には腫れが一つも無く、ヒルがくっついても剥がして僕らに見せびらかしては、その辺に放り投げるだけだ。

現地の言葉というものは、時に科学の枠を超えて、妙な信憑性を発揮させる事がある。

重ねて彼らは言う「僕らはいつも生き物を殺すけど…ヒルは人間を殺すわけじゃない。」と。

いつもウソとジョークばかりの口から、そんな真面目で静かな物言いで哲学を話されたら、僕は我に帰るしかない。

タイガーリーチも、心なしか可愛く見えてきた。(幻覚)

さぁ、

みんなも熱帯で

ヒルに吸われてみよう。

p.s.

【マラリアやデング熱を貰いたくなかったら、予防薬を飲んでおこう。僕の行ったバトゥプティ村は少ない所だった。】

ズボンは靴下の中にイン。長靴を履いたら、その上からレインウェアを履こう。定期的に脱いで確認すること。それでもヒルを完全に排除出来るかな…ヒルソックスを履くのが一番かも知れない。

とにかく、

断言はしないでおく。

Tiger leech(Haemadipsa picta

3㎝程のヒル。黄色と黒の縞模様が美しい。

葉の上で待ち伏せし、対象物が近づくと身体を伸ばし張り付く。

ツムギアリ(?)

マレーシアで撮影したツムギアリ

なんかこいつ、

妙に一つの所に留まっているなぁ、と思って撮影していたら…

【Myrmarachne plataleoides】

「残念、私、アリじゃないんです。」

カメラを向けると四つの眼をこちらに向けてくれた。小さいが、恐らくこれが目一杯の威嚇だろう。

正体はクモ。ツムギアリにソックリなアリグモの一種だ。

ちなみにこちらが、本物のツムギアリ。東南アジアに広く分布する獰猛なアリである。

コガネムシを股裂きの刑に処するツムギアリたち。コロニーと身体が大きい分、食べ物も沢山必要になってくる。一見グロテスクには見えるが、ツムギアリなりの生存戦略である。

アリグモがこのツムギアリに擬態し、アリを捕食するとは言うものの、果たしてこんな危険なアリをアリグモ1匹に仕留められるのか、甚だ疑問が残る。

こちらの写真は同行者が撮影したもの。

ツムギアリは幼虫の出す糸と葉っぱさえ有れば、至る所に巣を作ることができる。雨季に地面が水没してしまう熱帯ならではの工夫だろう。

それにしてもこの精巧さは、アリが顎で幼虫を掴んで紡いだとは思えない。

絶対、僕より裁縫上手いよ。